子供の医療保険の必要性と公的助成制度の仕組み

子供も医療保険に加入しておいた方が良い?

小さな子供に医療保険は必要?

悩む女性

 

我が家には小学生の子供がいます。
子供は何かとケガをすることが多いので、医療保険に入っておいた方が良いのか悩んでいます。
まだ小さな子供にも医療保険は必要でしょうか?


 

こんにちは!
ファイナンシャルプランナー兼サラリーマンのFP吉田です。

 

子供の医療保険加入をどうするべきか悩みますよね。
私の友人宅の小学生の男の子も、絆創膏で済む小さなものも含めて、なにかとケガをすることが多いです。

 

大人であれば、将来の病気やケガに備えて医療保険に加入する方は多いです。
では、子供の場合はどうなのでしょうか?

 

保険会社の医療保険や、共済の共済保険では0歳から加入できる医療保険が数多く存在します。
でも、当然ながら子供であっても加入すれば保険料の負担は生じます。

 

でも実は、子供の医療保険は入らなくてもほとんど問題ありません。
それは、さまざまな公的補助やあまり意識しないうちに加入している保険があるからです。

 

以下では、子供の病院への通院状況の実態と、どのような公的助成が受けられるのかを説明します。
では、はじめます!

 

実際のところ、子供はどの程度ケガや病気で入院と通院をしているのか

厚生労働省の統計で見る子供の病院とのかかわり

まず、子供の医療保険の必要性を考えるために、子供がどの程度病院に入院したり通院したりしているのかを見てみます。
厚生労働省が、年齢別の入院患者数と通院患者数を調査して公表しているため、そのデータが参考になります。

 

年齢別の子供の入院患者数と通院患者数

子供の年齢 入院患者数 通院(外来)患者数※
0歳 10,800人 68,300人
1~4歳 7,100人 266,600人
5~9歳 4,900人 182,700人
10~14歳 5,300人 119,700人
15~19歳 7,000人 91,600人

※通院(外来)患者数では歯科の外来患者は除いています。
出典:厚生労働省『平成26年患者調査

 

入院患者数と通院患者数を見てみると、多い年齢で約37倍以上の差があります。
それだけ、子供は通院による治療を受けることが多いことになります。
以上の表をグラフで見てみるとその差が良く分かります。

入院患者数と通院患者数の比較

 

通院が圧倒的に多いのは家庭内での事故が多いからという一面もある

骨折している子供

子供が病院に通院して治療を受けることが多いのは、多くの方がなんとなく納得できるのではないでしょうか。
実際に自分が子供のころを思い出してみると、特に小さい頃はやんちゃしてケガばかりしていました。
(今になると、親にとても心配をかけたなぁと思います…。)

 

子供のケガに関しては、1つ特徴をとらえた調査があります。
独立行政法人国民生活センターが、医療機関で治療を受けた方を対象として2012年に行った事故に関する調査によると、集まった事故情報の約8割は家庭内での子供に関しての事故だったそうです。

 


2010年12月から2012年12月末までの約2年間で、(略)13医療機関から9,889件の事故情報を収集した。
子どもを対象とした医療機関からの事故情報が多く寄せられたことから、年齢別では12歳以下の子どもの事故情報が7,997件と全体の約8割を占める。

 

12歳以下の事故情報7,997件のうち、事故発生場所が「住宅内」のものは5,390件と約7割を占めていることから、住宅内で起こった事故を「家庭内事故」として、事故の事例を中心に危害の種類と内容について分析結果をまとめた。

 

事例等からみた子どもの家庭内事故の特徴

  • 階段・ベッド・ソファからの転落
  • 風呂場での転倒、溺水(できすい)
  • 調理器具や食料品、暖房器具等によるやけど
  • タバコ、電池等の誤飲・誤嚥(ごえん)

出典:独立行政法人国民生活センター『医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故-子ども編-

 

このように、大人も含めた事故(ケガ)に関する調査の内、約8割を子供の事故が占めています。
以下に子供がケガをしやすいか、そしてそれにより外来で治療を受けることが多いかというのがお分かりいただけるかと思います。

 

入院よりは通院に備えたい

以上のような公的機関の調査結果からは1つ分かることがあります。
それは、子供の場合は入院よりも通院を重視して備えておきたいということです。

 

厚生労働省のデータを見ると、圧倒的に通院による治療を受ける子供の数が多いです。
上記のデータでは、歯の治療のための歯科への通院は除いていますが、それでも圧倒的違いがあります。

子供が長い時間を過ごす「学校」でのケガにはどう備える?

学校でのケガに備えて保険に入っている場合が多い

学校に着いた子供

子供が長い時間を過ごす場所と言えば、学校です。
小学校に入学してから、子供は毎日長い時間を学校で過ごすことになります。
ただその分、学校でケガをする可能性も出てきます。

 

体育の授業中にケガをすることもありますし、部活動中にケガをすることもあります。
また、友達とふざけていたり喧嘩をしたりしてケガをしてしまうこともあります。

 

実は、あまり意識されていませんが、そうした事態に備えて多くの家庭で子供用の保険に加入しています。
どんな保険かというと、公的機関である独立行政法人日本スポーツ振興センターが運営している「災害共済給付制度」というものです。

 

「災害共済給付制度」とはどんなものか?

「災害共済給付制度」とは、独立行政法人日本スポーツ振興センターが学校を通じて行う子供のための医療保障です。

 

子供が学校の管理下にいる間にケガをした場合に、その治療費の一部を給付してくれます。
これは、法律に基づき同センターが行っている給付制度です。

 

加入は任意加入となっており、必ず入らなければいけないものではありません。
ただ、入学説明会で説明を受ける事が多く、すでに小学生の子供がいる家庭で加入していることも多いことから、ほとんどの家庭が加入しているようです。
(入学説明会において、実際に子供の怪我を日々見ている養護教諭(保険の先生)が加入をすすめることが多く、加入することが多くなっています。)

 

誰がどのような給付が受けられるのか?

誰が給付対象か

この給付制度ですが、給付を受けられる対象が決まっています。
次の教育機関に通う児童や生徒が対象となります。

  • 幼稚園
  • 保育所(保育園)
  • 義務教育学校(小・中学校)
  • 高等学校

これら教育機関に通う子供が加入している場合に、給付の対象となります。
なお、大学生は対象外となります。

 

いくら給付されるのか

診察を受ける子供

続いては、肝心の給付の内容です。
どのくらい給付されるのかというのは非常に大切な部分になります。

 

給付条件

まず給付対象となる条件ですが、自己負担+健康保険負担の10割分の医療費が5,000円を超えた場合に給付対象となります。
10割という部分がポイントです。
通常、健康保険制度を使うと自己負担は3割となります。
そのため、自己負担額ベースで考えると医療費の自己負担額が1,500円を超えた場合に給付の対象となります。

給付条件:自己負担+医療費(10割)=5,000円以上

 

給付金額

続いては実際に給付される金額です。
給付される金額は、10割の医療費総額の4割が給付されることになります。
仮に医療費総額が8,000円だった場合には3,200円が給付額となります。

8,000円×0.4(4割)=3,200円(給付額)

 

この4割という金額は、医療費の自己負担分(3割)+α(交通費や雑費など)という考え方で決められています。
そのため、実際には自己負担額よりも少しだけ多い金額が給付されることになります。

 

給付の対象範囲はどこまで?

給付が受けられる場所的条件

続いては、どこまでがこの制度での給付対象となるかです。
まず1つポイントとしては、子供が学校の管理下にいる場合に給付対象となるというのがあります。

 

この場合の「学校の管理下」というのは次のような場合を指します。

  • 学校が編成した教育課程に基づく授業を受けている場合
  • 学校の教育計画に基づく課外指導を受けている場合(部活動や林間学校、進路指導等)
  • 休憩時間に学校にある場合
  • 通常の経路及び方法により通学する場合(登下校中)
  • 学校外で授業等が行われるときの集合場所までの往復中
  • 学校の寄宿舎にある場合

 

これを見てもらうと、子供を学校に預けている間はすべて対象になることが分かります。
授業中はもちろん、部活動中、登下校中も対象になります。
更に、家を出て子供が宿舎にいる場合には、宿舎内でのケガや病気も対象となります。

 

給付が受けられる対象

続いて、どのような事態が起きた時に給付の対象となるのかですが、学校の管理下において、次のような事態が発生した場合には給付の対象となります。

  • 疾病(病気)
  • ケガ
  • 障害
  • 死亡

 

ここまでを見ていただくと分かるとおり、学校に子供を預けている間の病気やケガはほぼ全て対象となります。
そのため、学校でのケガや病気については他に保険に入る必要はないといえます。

 

気になる保険料(掛金)はおいくら?

このように、子供が学校でケガをした場合に大きな助けとなる災害共済給付制度ですが、もちろん無料ではありません。
毎月一定の掛金を支払う必要があります。
実際の掛金額は次のとおりとなります。

 

災害共済給付制度の教育機関別の掛金
学校の種別 月の掛金
幼稚園 270円
保育所(保育園) 350円
義務教育学校
(小・中学校)
920円
高等学校 全日制 1,840円
定時制 980円
通信制 280円
高等専門学校 1,840円

出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター『共済掛金の額

 

月の掛金額は以上のようになっており、子供の進学先により270円から1,840円の間で設定されています。
ただ、この掛金については、自治体による補助が受けられます。
そのため、保護者の自己負担額は上記よりも少なくなるのですが、その補助割合についてはお住いの自治体によって異なります。

 

お住いの自治体でどの程度の補助が受けられるかは、自治体の教育委員会事務局の健康教育課等に確認していただく必要があるのですが、自治体による補助割合はおおむね次のような割合になっています。

  • 義務教育中の補助割合:4~6割
  • その他の場合の補助割合:1~4割

 

お住いの自治体により異なりますが、このように補助が受けられるため、負担はもう少し軽くなります。

学校以外での病気やケガにはどのように備えるべきか

学校以外での子供の医療費には自治体からの補助が出る場合がある

家庭での子供

ここまでご紹介した「災害給付共済制度」によって、子供の学校での病気やケガはほぼすべて保障されます。

 

次に問題になるのは学校以外での病気やケガへの保障です。
当然、子供は家庭で過ごす時間も多いため、その間の子供の保障が問題となります。

 

そうした学校以外での病気や怪我の保障には、自治体からの医療費助成制度が役に立ちます。
自治体からの補助制度とは、一定年齢以下の子供が病気やケガにより病院にかかった場合に、その医療費の一部を補助してくれる制度です。
名称は自治体によって異なりますが、多くの自治体では次のように呼ばれることが多いです。

  • 子ども医療費助成制度
  • 小児医療費助成制度

 

補助される金額はお住いの自治体によりさまざま

自治体窓口

この医療費助成制度は、先程の災害給付共済制度のように国の法律で決まっている制度ではありません。
あくまで、都道府県と自治体が独自に行っている制度となっています。
そのため、日本全国で同一の制度ではなく、自治体によって異なる制度となっています。

 

助成制度の大枠自体は各自治体とも似てはいますが、次のような点で違いが出てきます。

  • 助成対象となる子供の年齢
  • 助成対象となる医療費(入院か通院か)
  • 親の自己負担額の有無
  • 親の所得状況による所得制限の有無

 

こうした点で、助成対象などが変わってきます。
一般的に、財源が豊富で子育てに力を入れている自治体では厚めの助成内容となっている場合が多いです。
反対に、財源が厳しい自治体では、最低限のないよとなっていることがあります。

 

実際にどのような助成が受けられるのか?

実際に受けられる助成内容は自治体によりますが、ここで所得制限の有無で2つの自治体での例を挙げてみます。

 

保護者の所得制限がない例:東京都中央区
子供の年齢 入院の助成 通院の助成 薬局での調剤の助成 保護者の所得制限 助成内容
0歳 無し 保険医療費の自己負担額
(健康保険の3/10の部分)
1歳~7歳 無し
8歳~15歳 無し
16歳~ 対象外

出典:東京都中央区『子供の医療費助成

 

保護者の所得制限がある例:神奈川県横浜市
子供の年齢 入院の助成 通院の助成 薬局での調剤の助成 保護者の所得制限 助成内容
0歳 × 無し 保険医療費の自己負担額
(健康保険の3/10の部分)
1歳~7歳 × 有り
8歳~12歳 × 有り
13歳~15歳 × × 有り
16歳~ 対象外

出典:神奈川県横浜市『小児医療費助成

 

同じ関東圏でも全然違う

調べる女性

東京都中央区と神奈川県横浜市を例にご紹介しました。
大きな違いとしては保護者の所得制限の有無と、調剤薬局利用に対しての助成の有無です。

 

比べてみると、東京都中央区では保護者の所得制限がなく、調剤薬局を利用した際にも子供の医療費の助成が受けられることが分かります。
これはかなり手厚い助成内容となっています。

 

このように、同じ関東圏の大きな自治体でも助成内容にはそれぞれ違いがあります。
そのため、お住いの自治体の助成内容がどのようになっているかを一度確認しておくと良いです。
確認の際には、自治体のホームページを見れば確認することができます。

 

助成制度の利用には事前の手続きが必要!

自治体の助成制度ですが、利用するためには事前に手続きを行う必要があります。
どのような手続きかというと、お住いの自治体の窓口で「小児医療証」の交付を受けます。

 

そして、子供が病院にかかる際に健康保険証と一緒に窓口で小児医療証を提出します。
そうすることで、自治体の助成制度に合わせた料金となります。
(自治体が全額負担の場合は無料になり、一部負担の場合は少し自己負担額が必要となります。)

15歳以降の子供の保障が心配なら共済の利用がおすすめ

15歳までの子供の医療保障はかなり充実している

ここまでご紹介した内容を見て頂いて分かるとおり、子供を取り巻く医療費の補助制度は充実しています。
  • 安い掛金での学校管理下での病気や怪我の保障(災害共済給付制度)
  • 自治体からの医療費助成制度
上記の2つがあることで、子供が15歳になるまでは医療保険に入る必要は無いといってよいでしょう。
万一、子供が手術を受けることになっても、健康保険制度の高額療養費制度の適用もあるため、医療費はそこまで多くかかりません。

15歳以降が不安なら共済の利用は有り

中学生

なお、自治体による医療費の助成はどの自治体でも中学校3年生(15歳)までとなっています。
そのため、子供が高校生になると、学校外でのケガや病気に対しての保障が健康保険のみとなってしまいます。

もし、それに備えるのであれば、共済保険の利用をおすすめします。
共済保険は、1年更新の定期保険であるため、子供が大きくなり自分で保険に加入するまでの一定期間の保障として役に立ちます。

一例として県民共済があります。
私自身、子供のころに親が県民共済に加入させてくれていたため、遊んでいて捻挫をした際に整骨院に通院して通院給付金を受け取った覚えがあります。
(一部を、お小遣いとして母から受け取ったため非常によく記憶に残っています。)

県民共済には子供用の共済保険があり、月1,000円の掛金で次のような保障が得られます。

保障内容
入院 事故 1日目~360日目まで 1日あたり5,000円
病気 1日目~360日目まで 1日あたり5,000円
通院 事故 1日目~90日目まで 通院1日あたり2,000円
手術 2、5、10、20万円
先進医療 1~50万円
死亡 500~50万円
第三者への損害賠償 100万円
1,000円は自己負担
毎月の掛金 1,000円

毎月1,000円の掛金でこれだけの保障が得られます。
大人の場合、県民共済で近い保障を得ようと思うと毎月2,000円の掛金が必要になります。
そのため、子供が15歳以降になったときに医療保障が必要であれば、これに加入しておけば必要な保障はカバーできるといって良いでしょう。

このように、万一15歳以降の保障が心配であれば、災害共済給付制度と県民共済を併用することで大きな保障を得ることができます。
もし、15歳以上のお子さんがいらっしゃる場合には、ご家庭の状況と合わせて検討してみてくださいね。





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