レーシック手術の健康保険適用の可否と医療保険との関係

レーシック手術の治療費を保険でカバーしたい!

レーシック手術は医療保険の対象になりますか?

悩む女性

 

視力が悪く困っているので、レーシック手術を受けようか悩んでいます。
お金が結構かかってしまうので悩んでいたのですが、医療保険に入っていることを思い出しました。
レーシックも手術という名前が付いていますし、医療保険の対象になりますよね?


 

こんにちは!
ファイナンシャルプランナーの吉田です。

 

一時期とても話題になったレーシック手術(角膜屈折矯正手術)は、現在ややブームは下火になりました。
でも、コンタクトレンズやメガネの煩わしさから解放されたくて、施術を受ける方は今でもいらっしゃいます。

 

私自身も、昔から視力が悪く毎日コンタクトレンズをして過ごしているので、裸眼で過ごせたらどんなに楽なんだろうと思います。
(ちなみに、以前私は2ウィークのコンタクトレンズを使っていましたが、1dayの使い捨てのものに変えてから、やや快適になったのでおススメです。)

 

レーシック手術は健康保険適用外

さて、そんなレーシック手術ですが、健康保険制度は適用対象外となっています。
美容外科の施術と同様「自由診療」にあたり、治療費はすべて患者さんが負担することになります。

 

最近は治療費が安くなってきていますが、それでも20~50万円程度の治療費が必要となります。
治療のためとはいえ、この金額をポンと用意するのはなかなか大変です。

 

そこで気になるのが「医療保険」です。
医療保険の「手術給付」を利用することができれば、1回の手術あたりに10~20万円程度の給付を受けることができ、治療費に充てることができます。
では、レーシック手術は、医療保険の給付を受けることができるのでしょうか?

 

実は、医療保険の給付対象になるかどうかは、医療保険の加入時期によって変わってくるんです!

 

適用になる医療保険は加入時期によって変わる

医療保険の給付対象になるものもある

レーシック手術が医療保険の適用になるかどうかですが、それは2007年3月までに医療保険に入ったかどうかで変わってきます。
なぜその時期なのかというと、その時期に、医療保険でのレーシック手術の保障に関する変更があったからです。

 

2007年3月までに加入した医療保険の場合

医師

2007年3月までに医療保険に加入した方であれば、レーシック手術が手術給付の対象となる可能性が高いです。
対象となるかどうかについては、加入している医療保険の約款を見てみる必要があります。
(約款とは、契約内容について細かく書いてある冊子です。)

 

その約款の手術給付の項目の中に「感覚器又は視器の手術に関する特約」という表記があれば、レーシック手術が給付対象となる場合があります。
(なお、レーシック手術が確実に保障対象となるかどうかを判断するためには、加入している保険の保険会社に確認をする必要があります。)

 

2007年4月以降に加入した医療保険の場合

2007年の4月以降に加入した医療保険の場合には、残念ながら給付対象とならない場合がほとんどです。
約款を見てみても、先ほどの「感覚器又は視器の手術に関する特約」という記載は見つからないはずです。

 

もしくは、丁寧な保険会社であれば約款の中でレーシック手術が給付対象外である旨が記載されている場合もあります。

 

なぜ2007年4月がポイントとなるのか

困るFP吉田

2007年4月が1つの境目となるのかというと、その時点で一斉に医療保険の契約条項の改正が行われたからです。
改正により、ほぼ全ての保険会社でレーシック手術が医療保険の給付対象から外されました。

 

その理由は非常に簡単です。
レーシック手術を受けた後、すぐに保険を解約してしまう人が増えたからです。

 

医療保険は、がん保険のように加入後90日間の無保障期間というものがなく、加入すればすぐに保障を受けることができます。
そのため、レーシック手術を受ける少し前に加入して、加入後すぐにレーシック手術を受けて給付金を受け取るということができてしまいました。

 

それだけならまだマシなのですが、給付金を受け取った後すぐに医療保険を解約してしまう人も多く存在しました。
こうなると保険会社としては非常に問題です。

 

保険は加入者相互の助け合いシステム

医療保険は相互扶助のシステムが取られています。
相互扶助とは、簡単に言ってしまえば「助け合い」という意味です。
医療保険の加入者全員が保険料を支払い、それで貯まったお金を病気で困った人が困った時に一部受け取るという仕組みになっています。

 

しかし、それを(ある意味で)うまく利用したのがレーシック手術目的で加入してすぐに脱退してしまうった人たちです。
レーシック手術を受ける少し前に加入して給付金の受け取り後にすぐに脱退するというのは、今まで保険料を支払ってきた人たちが貯めたお金をもらい、後は自分は保険料を支払うことなく抜けてしまうというものです。

 

こうなると、それまで保険料を支払ってきた加入者がバカを見る結果となってしまいますし、保険会社も契約者の減少につながり、保険を提供できなくなってしまう可能性があります。
そのため、こうした抜け道をふさぐためにレーシック手術が給付対象とならないような改正が行われました。

レーシック手術を受ける前に医療保険に入っておかないと危ない!

手術前の医療保険加入が大切

注意する医師

ここまでご説明したように、今から医療保険に加入しても、レーシック手術でその医療保険を使うことはできません。
しかし、それでもレーシック手術を受ける前には医療保険に入っておく必要があります。

 

その理由は、レーシック手術後に医療保険に入ると、眼が特定部位不担保となってしまう可能性があるからです。
特定部位不担保とは、体の特定の部位を保険の保障対象外とするという意味です。
今回の場合は「眼」がそれにあたります。

 

特定部位不担保になるとどうなる?

眼が特定部位不担保になるとどうなるかですが、今後眼の病気やケガで入院をしたり手術をしたりした場合に、一切医療保険が使えなくなってしまいます。
そうなってしまったら、せっかく保険料を支払ってきた意味もなくなってしまいます。
(なお、眼のみが不担保部位である場合には、それ以外の病気やケガに対しては問題なく使うことはできます。)

 

こうした理由があるため、レーシック手術で医療保険が使えないとしても、手術を受ける前に医療保険に入っておくことが大切です。

保険は使えないが「税の控除」は受けられる!

「医療費控除」を忘れずに利用しましょう

ここまでご説明した通り、レーシック手術では次の2つは使用することができません。

  • 公的な健康保険
  • 医療保険

しかし、だからと言って何もできないわけではありません。
「医療費控除制度」によって、税金の控除は受けることができます。

 

医療費控除制度とは?

税の計算をする女性

医療費控除制度とは、その年に一定額以上の医療費を支払った場合に、その一部が税額決定に用いられる収入から控除される(差し引かれる)という制度です。
会社の年末調整や確定申告で「生命保険料控除」というものを使ったことがある人は多いと思います。
それの医療費版です。

 

医療費控除制度を使うことで、次の2つの税金が安くなります。

  • その年の所得税
  • 翌年の住民税

また、所得そのものが下がるため、国民健康保険に加入している方は翌年の国民健康保険料(税)も安くなる場合があります。

 

対象となるのは自己負担した医療費

対象となるのは、次のとおり自分が実際に負担した医療費です。

  • 自由診療の場合は10割負担分
  • 健康保険を使っての診療の場合は3割負担分

 

こうして負担した医療費が、年間を通して10万円を超えた場合に、10万円を超えた部分からが医療費控除の対象となります。
すなわち、年間医療費に50万円かかった場合には、次のとおり40万円を年間の収入から控除することができます。

50万円 - 10万円 = 40万円(医療費控除額)

 

では、続いては実際に50万円のレーシック手術を受けた場合、税金がどの程度安くなるのかを見ていきます。

 

所得税の還付例

計算の説明

医療費控除を利用した場合の税控除について、まずは所得税の計算をしてみます。
先ほどの計算例のとおり、50万円のレーシック手術を受けた場合には、10万円を超えた分の40万円の医療費控除を利用することができます。

 

所得税額は、所得額に所得税率をかけて算出することができます。
そのため、控除される金額(40万円)に所得税率を計算することで、安くなる所得税額がわかります。

 

もし所得税率が20%の場合には、次のように計算することで安くなる所得税額がわかります。

40万円 × 20% = 8万円(安くなる所得税額)

 

所得税の税率と控除できる金額

所得税は累進課税となっており、所得が増えるほど税率がアップします。
そのため、実際に所得税がいくら安くなるのかを計算するためには、その人の所得区分に合った税率を用いる必要があります。

 

所得と所得税率の関係から、40万円の医療費控除を利用した場合の安くなる所得税額は次のとおりとなります。

 

2019年現在の所得税率は次のとおりとなっています。
所得額 所得税率 安くなる所得税額
195万円以下 5% 2万円
195万円を超え 330万円以下 10% 4万円
330万円を超え 695万円以下 20% 8万円
695万円を超え 900万円以下 23% 9万2,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 13万2,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 16万円
4,000万円超 45% 18万円

(出典)国税庁『所得税の税率

 

医療費控除は確定申告で行う

医療費控除を利用することで、上記のとおり所得税が安くなります。
ただ、安くなるとは言っても、自動的になるわけではありません。

 

医療費控除を利用するためには、自分で確定申告をする必要があります。
そうすることで、確定申告の際に還付用として登録した銀行口座に、安くなった分の所得税が還付されます。

 

会社員の方等が毎年利用している年末調整では医療費控除の申告はできませんので、注意が必要です。

 

住民税の減税例

窓口での手続き

続いては、住民税の場合です。
住民税も、所得税の場合と同じく、10万円を超えた分を住民税算定の収入から控除することができます。
レーシック手術の医療費が50万円の場合には、40万円が医療費控除の対象となります。

 

実際に安くなる住民税額についての考え方は所得税の場合と同じです。
医療費控除額に住民税の税率を掛け算することで、減税される住民税額がわかります。

 

ただ、住民税の場合は計算が簡単で、税率は一律10%となっています。
そのため、安くなる住民税額の計算は次の計算式で行うことができます。

40万円 × 10% = 4万円(安くなる住民税額)

 

住民税は翌年の分が安くなる

住民税の場合は、所得税のように還付が受けられるわけではありません。
翌年支払う住民税から、安くなった分が差し引かれます。

 

というのも、住民税は、前年の所得を基準として計算される税金だからです。
そのため、医療費控除によって所得が下がると、その翌年の所得税が安くなるのです。

 

先ほどの例であれば、年間の住民税額が4万円安くなります。

 

住民税の減税手続きも確定申告で行う

住民税の減税を受けるための手続きも、所得税と同様に確定申告で行う必要があります。
ただ、所得税の確定申告を行っている場合には、その際の申告書が自動的に市区町村にも送付されるため、あえて住民税の分のみの確定申告を行う必要はありません。

 

おまけ:翌年の国民健康保険料も安くなる

ここからはおまけとなりますが、国民健康保険に加入している方は、住民税の申告を行うことで、翌年の国民健康保険料(税)も安くなります。

 

国民健康保険は、住民税と同様に前年の所得額を基準に保険料(税)を決定しています。
そのため、医療費控除を利用すると、翌年の国民健康保険料(税)も安くなります。

手術前の医療保険加入と税控除の利用を忘れずに行おう!

税制度をうまく利用することで負担を軽減できる

レーシック手術と医療保険の関係について、ここまでご紹介したことをまとめると次のようになります。

 


 レーシック手術と医療保険のまとめ 

  • レーシック手術に医療保険が使えるかどうかは2007年4月を境に変わる
  • レーシック手術を受ける前に医療保険に入らないと「眼」が特定部位不担保となる場合がある
  • 「医療費控除」を利用することで、所得税が医療費×所得税率分安くなる
  • 「医療費控除」を利用することで、住民税が医療費×10%分安くなる

 

この中でも特に重要なのは、レーシック手術で医療保険が使えるかどうかというよりも、レーシック手術を受ける前に医療保険に入っておかなければいけないという点です。

 

もし、レーシック手術を受けた後に医療保険に入った場合には、今後ずっと眼に関する保障は受けられなくなってしまう可能性があります。

 

そうならないためにも、レーシック手術を受ける前の医療保険加入が大切です。
ご自分の保険加入状況を再度確認してみて、もしまだ医療保険に加入していない場合には、ぜひ手術前に加入を検討してみてください。

 





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