がん保険の入院給付って必要なんですか?
色々ながん保険を見ていたら、入院したときの保障を付けるか付けないか選べるものがありました。
でも、入院の保障って必ず必要ですよね?
付けなくても問題ないんでしょうか?
こんにちは!
ファイナンシャルプランナー兼サラリーマンのFP吉田です。
私ががん保険に加入した2012年ころまでは入院給付は基本保障で必ずついていました。
でも、最近のがん保険では、基本保障から外れて特約として選べるようになっているものも増えてきています。
結論からお伝えすると、がん保険の入院給付は、すでに医療保険で入院時の保障がある場合には必ずしも付ける必要はありません。
がん保険の入院保障の重要度は年々下がってきています。
このページでは、がん保険の入院給付の内容や、入院給付の必要性をご説明します。
それでは、はじめましょう!
がん保険の入院給付の内容とは?
入院1日単位で給付が受けられる
まず、がん保険の入院給付の内容を簡単にご説明します。
がん保険での入院給付は、がん治療を目的とした入院した場合に、1日単位で保険金の給付が受けられるものです。
多くのがん保険で、1日10,000円~15,000円を目安として設定があります。
ほとんどのがん保険で、日帰り入院から、最長で入院日数の制限なく保障を受けることができます。
基本的な仕組みは医療保険の入院給付と同じですが、唯一違うのは保障対象です。
医療保険の入院給付がすべての疾病を対象にしているのに対して、がん保険ではがんによる入院だけを対象として給付を行います。
がんだけに特化しているので、医療保険に比べて給付額が多かったり、保障日数が無制限であったりと、内容が強化されています。
かつて「入院給付」はメインの保障だった
入院給付は、かつてはがん保険のメインの保障でした。
ほぼすべてのがん保険で、基本保障に含まれていました。
ただ、最近では入院給付を基本保障から特約保障に変えているがん保険も増えてきています。
特約保障になったことで、入院給付を付けずにがん保険に加入することもできるようになりました。
こうなったのには、がん保険の治療方針の変化が関わっています。
がんの入院日数は年々短くなってきており、無制限保障を付ける意味が大きく薄れてしまったのです。
入院によるがん治療は年々減ってきている
厚生労働省の統計調査を見てみると、がん治療のための入院日数が年々短くなってきていることが一目瞭然です。
3年ごとに行われている「患者調査」で見てみましょう。
がんの種類別の入院日数の変化
赤字は最も最近のデータです。
傷病分類 | 平均入院日数 | |||
---|---|---|---|---|
平成17年 (2005年) |
平成20年 (2008年) |
平成23年 (2011年) |
平成26年 (2014年) |
|
胃のがん | 34.6日 | 26.8日 | 22.6日 | 19.3日 |
結腸及び直腸のがん | 30.7日 | 19.2日 | 17.5日 | 18.0日 |
肝及び肝内胆管のがん | 26.9日 | 22.4日 | 18.6日 | 18.8日 |
気管,気管支及び肺のがん | 34.1日 | 27.2日 | 21.7日 | 20.9日 |
乳房のがん | データなし | データなし | 11.8日 | 12.5日 |
出典:厚生労働省『患者調査』
このように、がんの入院日数はかなり短くなっています。
最も新しい平成26年調査では12.5日~20.9日です。
この日数であれば、入院保障が日数無制限で受けられるのは以前ほど価値はありません。
入院日数の短縮は技術の進歩などが理由
がんによる入院日数が年々減少しているのは、主に次の2つの理由からです。
- 医療技術の進歩による治療期間の短縮
- 国による平均入院日数の短縮化促進
入院短縮化の理由1医療技術の進歩による治療期間の短縮
1つ目の理由は、医療技術の進歩による治療期間の短縮によるものです。
以前は、がんを切除するというと大掛かりな手術が必要でしたが、現在では内視鏡を用いた比較的簡易な手術で済ませることもあります。
実際に、私の父が副腎のがんを切除した際には、お腹に小さな穴をあけ、その穴から内視鏡を入れて切除するという手術を行いました。
もちろん、術後数日は入院しましたが、それでも開腹手術に比べればかなり回復は早く、入院期間も短かったです。
このように、医療技術が進歩しているというのも入院短縮化の1つの理由です。
入院短縮化の理由2国による平均入院日数の短縮化促進
2つ目の理由は、国による平均入院日数の短縮化促進によるものです。
現在は、患者を長期入院させずに14日以内で退院させて、限られたベッドを14日以内で1回転させることが病院にとって最も儲かる仕組みとなっています。
これは、診療報酬制度という病院の利益の仕組みに関わる制度が改正されたことによるものです。
以前は、病院は患者を長期入院させた方が利益が上がる仕組みとなっていました。
ただそれが、医療費負担の増加による国の財政圧迫に繋がっており、医療費を削減したい国によって「入院14日以内が最も儲かる」という仕組みに診療報酬制度が改正されました。
(医療費負担とは、健康保険制度の国の7割負担部分のことです。)
より具体的には、14日目以降は、基本の診療報酬に対して加算される診療報酬が減っていくよう改正されました。
- 1日~14日目まで:450点加算(4,500円)
- 15日~30日目まで:192点加算(1,920円)
- 30日目以降:加算無し
(7対1入院基本料の場合)
病院も利益を上げることで運営が行われているため、儲かるというのはとても大切なことです。
そのため、できるだけ早期に患者を退院させるような動きになってきています。
入院治療から通院治療へ
ご紹介したように、医療技術の進歩などにより入院日数はどんどん短縮化されてきています。
ただ、短期間で完全に治療が終了するようになったわけではありません。
退院後には、病院に通院して治療を行うようになります。
実際に、入院患者数と通院患者数を比べてみると、次のように平成20年から通院患者数の方が多くなってきています。
入院患者数と通院患者数の推移
疾病分類 | 平成11年 | 平成14年 | 平成17年 | 平成20年 | 平成23年 | 平成26年 |
---|---|---|---|---|---|---|
入院患者数 | 136,800人 | 139,400人 | 144,900人 | 141,400人 | 134,800人 | 129,400人 |
外来(通院)患者数 | 119,900人 | 119,700人 | 140,100人 | 156,400人 | 163,500人 | 171,400人 |
出典:厚生労働省『患者調査(平成17年~平成26年)』
これをグラフにしてみると分かりやすいです。
このように、現在では医療技術の進歩により、通院での放射線療法や投薬療法による治療が増加してきています。
また、手術だけで治療を行うのではなく、上の2つの治療法と組み合わせての治療が主流となっています。
こうした治療は患者への負担が少なく、通院で治療を受けることができるようになりました。
その結果、長期入院による治療から、短期入院+通院という治療へと変わってきています。
通院も費用がかかる
こうして、通院での治療が増加してきたことを受け、がん保険では入院給付が基本保障である必要性が薄れてきました。
そこで、新たにがん保険で基本保障となってきているのが「通院給付」です。
通院給付は、入院給付の通院版だと思っていただければわかりやすいです。
通院1日を単位として、給付金が支払われます。
医療保険で手厚い入院給付があるなら、必ずしもがん保険の入院給付は付けなくても良い
さて、ここで冒頭の疑問への回答となります。
ご紹介してきたとおり、がん治療は入院から通院へ移り変わってきています。
そのため、がん保険の入院給付は必ず必要であるとまでは言えなくなりました。
ただし、入院が0になったわけではありません。
あくまで、短くなっているだけです。
また、入院給付は単に入院時の自己負担分のサポートというだけではなく、入院して働けない間の休業保障(補償)も兼ねています。
こうした理由から、入院給付が全く必要ないというわけではありません。
では、どんな場合に必要ないのかというと、医療保険ですでに入院給付がある場合です。
医療保険にはがんへの手厚い入院保障が付いている場合がある
医療保険では、三大疾病や七大疾病を対象とした入院延長保障が存在します。
そうした延長保障の中では、ほぼ確実に「がん」は入院日数無制限保障となっています。
そのため、もしすでに医療保険に加入していて、なおかつ延長保障があるならば、がん保険で入院給付を付けなくても大丈夫です。
このように、がん保険の入院給付の必要性は、治療方法の変化や医療保険の保障の進化によって、必ずしも必要とは言えなくなってきています。
ぜひ、ご自分がいま入っている他の保険との保障の重複も考慮しながら、入院給付の必要性を判断してみてくださいね。